藤のタネ

暗くなってから窓を開けたところ周りでパキパキと音がしていました。冬の寒い日に聞こえる藤のタネがはじける音です。
藤のタネはソラマメをもう少し大きくしてつぶしたようなサヤのなかに「おはじき」のような黒いタネがいくつか入っています。

この時期のとても寒い日にサヤがはじけて中のタネがはじけ飛びます。おそらく5m以上は飛ぶと思いますが、建物に近い木に絡んでいる(かなり高い位置まで)ものは飛ぶ方向によっては駐輪場の金属の屋根に落ちるので、「パキッ」と音がすると次に「カンッ」を金属を叩く音がします。

朝になると路上にはじけたサヤとタネが転がっていることもあります。

と、これで終わりにしようかと思いましたが、これを人工的に(僕が仕事で)やろうとしたらどうすれば良いか考えてみました。

藤の花が咲くのは、このあたりでは5月の連休くらいです。そこからタネができて飛ぶまで8ヶ月かかっています。
ですから8ヶ月前からタイマーが作動します。次に気温を測らなければなりません。サヤが上手くはじけるためには確実に乾燥していないとならないので、湿度も測らなければなりません。いよいよはじける時には、はじけされるための物理的な機構も必要です。そして、8ヶ月間動き続けるための動力(例えば電池)も必要です。
フローとしては、花が終わる→タネが成長する→夏を越し、秋を越し、冬になった→タネは十分成長したか?→サヤの乾燥状態は問題無いか?→気温は十分低いか? を確認した上で、最後にサヤをはじけさせる機構(モーターかソレノイドか?)を動かして完了。おそらくこんな感じでしょうか? 電気的にやれば結構大がかりなシステムですが、植物はこれを電力無しでいとも簡単に実現しています。秋から冬になれば、木そのものは休眠していると思うので、実際にはタネ(サヤ)だけで仕事が進んでいるはずです。そして落ちたサヤもいずれ土に還ります。これをもしマイコンでやらせたらと考えると、タネ(サヤ)1つ1つにマイコン、センサ、電池、そして駆動装置が必要で、タネが飛んだら土に還るどころか、これらはゴミになってしまいます。

こう考えると、自然の仕組みというのはたとえようも無いくらいにシンプルで完成されたシステムですね。
(と書いていたら、閉めてある窓の外からそれらしい音が聞こえてきました。)

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