ハイサイドスイッチボードを設計 

 MOSFET使用のハイサイドスイッチボードの設計と回路検討をしています。基本構想は13.8V、10Aでの過電流検出ですが、製作時の部品選択を変えることで過電流検出の値を6Aまたは15Aにも設定できるように検証中です。外部の接点またはオープンコレクタから制御し、過電流検出時は外部へオープンコレクタ出力で知らせると共に出力を停止させます。生産設備においては検査中の電源短絡があり得るので過電流検出での保護ができないと設備そのものの故障につながることもあり、最悪は生産ラインが長時間停止になってしまうことも。

 そのような事態を極力さけるためには過電流での電流遮断が求められ、保護素子としてはガラス管ヒューズやリセッタブルヒューズなども使われますが、ガラス管ヒューズでは切れた時に交換が必要でありリセッタブルヒューズでは大電流からは保護されますが完全に遮断されずに設定された電流が流れ続けてしまいます。そのためにお勧めしたいのが電子ヒューズです。

 今回検証中のハイサイドスイッチでは電源の入切の制御と保護回路が組み合わされており、接続される電子機器に搭載されている電解コンデンサによる突入電流に対してもソフトスタートさせることで過電流検出が働かないようにするということが設計の条件です。

 初めは150WのMOSFETで問題無いだろうと目論んでいましたが、実動作でデータを取ったところソフトスタート(0から100%まで3.5mSec程度)の立ち上がり時に思いのほか大きな電力を一時的に消費することに気がつきました。そのため150Wを300WのMOSFETに変更することに。また、遮断時には大きな容量負荷(4700uF)ではリンギング状の振れが認められました。そのため遮断時も少しの傾きをつけると共にRC(抵抗とコンデンサ)のスナバ回路を追加してリンギングを防止することにしました。次の画像は負荷に2Ωの抵抗と4700uFのコンデンサ。容量が大きいので切断されてからも電圧が下がるのに時間を要しています。(青色が電圧、紫色は電流波形。)なお、この時間を短縮したいというときには電源の制御とは別に電源ラインに対グランドへの放電回路を組み込み、電源の遮断後に強制的に放電させるといった対応を取ることもあります。 

 次のグラフでは遮断の瞬間だけに着目してみます。直線状に下げているゲートのオフ信号に対して少し緩やかに下がっている下側の波形が電流波形です。時間にして100uSec程度。少しだけ緩やかに下げることによって振れを抑えることができました。(負荷容量が小さい場合には抵抗値を下げることによりさらに短時間での遮断とすることが可能です。) 

 結局、初めのプリント板では回路として想定していなかったMOSFETのゲート-ソース間のスナバ回路と、遮断時用に抵抗の追加が必要となったのでパターンを改良したセカンドバージョンを製作することになりました。

 写真では放熱器に設置されたMOSFETが1つ見えますが、電源装置への逆流防止が必要な場合に備えて背面側にback-to-back接続でもう1つ搭載できるようになっています。写真の初期バージョンでは電源及び検査製品との接続に端子台を設置しましたが、電線挿入型の端子台が使いにくいことや筐体へ組み込んだ場合にパネルから顔を出せた方が使い勝手が良さそうだということで、セカンドバージョンではモレックスの5569コネクタ(4極)に変更します。制御側とはモレックスの5045の4ピンコネクタでの接続です。