使用条件から放熱器を選ぶときは、
チャネル~ケース間の熱抵抗値 RthJCが必要です。データシートに記載が無ければ次の方法で算出します。
データシートから、TjMAX、TjMAXの規定されるTc、Pdを調べます。
今、実験に使っているIXFH96N15Pでは、TjMAX=175℃(Tc=25℃)、Pd=480Wなので、
これを、RthJC=(TjMAX-Tc)÷Pd に当てはめて計算すると、
RthJC=(175℃-25℃)÷480W =0.31℃/W
(データシート記載のRthJCと一致します)
周囲温度 Tamb=40℃と定義します。寒冷地であれば低くしても良いでしょうし、熱い地方では50℃くらいにしたほうが良い場合もあります。
データシートの値ではなく、使用時における実際の消費電力(今回は電子負荷として使用する上限値)を今回は、
P=15V×10A=150Wとします。 ( P=Vds×Id )
この消費電力を用い、チャネル~空気間の熱抵抗を求めます。
RthJA=( (TjMAX×ディレーティング) -Tamb )÷P に値を入れると
RthJA=((175℃×80%)-40℃)÷150W =0.67℃/W
ディレーティングとは素子に余裕を持たせるため、ここでは絶対最大定格の8割までしか使いませんということで80%と置きます。(ギリギリまで使いたい、壊してもよいという場合は100%で構いません。)
次にケースと放熱器間の熱抵抗 RthCF を資料から求めます。
この値は、使用するグリスやシートで異なります。
今回のFETでは、RthCS =0.21としてデータシートに記載されています。これはどういう方法での取り付けでの値かわかりませんが、この値を使ってみます。 ここではRthCSと記載されていますが、RthCFと同義です。(メーカーによって表現が違います。)
グリスの場合は、データシート記載の熱伝導率と使用時の厚みから計算します。(あらためて紹介するつもりです)
以上の値を用いて、必要とされる放熱器の熱抵抗 RthFA を計算すると、
RthFA=RthJA-RthJC-RthCS
=0.67-0.31-0.21
=0.15 ℃/W
よって、この条件では RthFA=0.15℃/W より小さい値の放熱器を選べばよいことになりました。もし、マイナスの答えが計算された場合は放熱が成り立ちませんから設計を変更しないといけません。
実際に組んだ場合は、計算が間違っていないかを確かめる意味でも素子の温度を計測します。
発熱が大きい回路はきちんと確認しておかないと、火災の危険がありますから。
単位について、℃/Wと書いてあるものや K/Wと書かれているものがありますが、同じです。
なお、上記内容に誤りがあった場合等、すべての結果については当方は責任を持たないことは予めお断りしておきます。
参考文献: 電子機器設計者のための放熱技術入門 (日刊工業新聞社)